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2000年01月11日

山男魚 「鶴見川からモントレーへ 10」

95/10/19 22:44

「鶴見川からモントレ-へ」釣りによって出会った情景と人々 その10

第十章 「マムシがウナギに化けた話」

 
こんちゃんで思い出すのは「マムシの話」 それは昭和52年(1977)か昭和53年(1978)の夏、当時、僕が設計し、力さんが試作すると言う職務で同じ職場にいた。この頃、良く会社が始まる前とか、会社が終わってから、釣りに行ったものである。

 この日も会社が終わってから一緒に釣りに行こうとになり、それぞれ車で管野川へ出掛けて行った。管野川中域の道路脇に車を駐めて落合い、上流と下流に別れて釣りを始めた。力さんは上流に、僕が下流へと向かった。

 仕掛けを作り、糸を竿に結んで、いざ釣りをしようとして、ふと石垣の横の葛の葉の上に目をやると、そこには大きなマムシがトグロを巻いて座っているではないか。あの身の毛のよだつ様な銭形模様、もともと蛇は苦手。このマムシを見たとたん、全身が硬直し身動きが取れない様な状態になってしまった。

 派手に動けば飛び掛かって来る様にも思え、野性のマムシを見たのは始めてなので、好奇心でもっと観察したいとも思え、何とも言えない気持ちであった。しかし、もう釣りどころではない。

 「オ-イ!!こんちゃん、大変だ、マムシだ。オォ-イ、こん、マムシだぞぅ」マムシを横目で睨みつつ大声で、上流に姿の見える力さんに声を掛けるが、渓流の水の流れる音に消されて、声が届かず力さんはどんどん遠ざかって行く。

 その場をそっと離れてしばらく釣りをしたが、釣りに集中できる訳が無くそうそうに切り上げて、マムシの居た場所に戻ると、野郎、まだトグロを巻いて葛の葉の上でじっとしている。

 こんはまだ戻らない。そこから少し離れた所に座り込んで、マムシを見ながらこんの帰って来るのを待った。一時間程待ったであろうか、やっと向こうからこんが川を渡って来るのが見える。---

「やもさん、釣れたかい、上の方じゃかなり当たりがあって、良い型のがでたよ」

「-----」

「どうかしたかい、やもさん、顔色が良くないぜ、アタリが無かったずら!」

「おい、それ所じゃないぜ、あすこを見てみろ」

「ありゃぁ、マムシじゃないか、でかいな、おりゃぁこんなでかいの見たことないぜ」

「どうするか、とっつかまえてマムシ酒でも作るか、人の話じゃ、大きなマムシは一本2万円位するらしいぜ、これだけ大きいのであれば、相当の価値があるぜ」

「だけど、どうやって捕まえる? 俺ぁ、素手で捕まえる度胸は無いぜ、蛇なんかこわかないけどマムシは別だよ、噛まれてあの世へ行くのはやだからな」

「待て、良い考えがある。釣り竿と紐を使って、捕る仕掛けを作ろう」

 僕の車の置いてある所へ二人で取って返し、たまたま僕の車のトランクに入っていた、海用の投げ竿と細身のロ-プで輪を作り、ロ-プの端を引っ張ると輪が締まるようにしたマムシ取りの仕掛けを作った。

 この仕掛けを持って、マムシのいる所へ戻った。マムシはまだトグロを巻いている。二人で顔を見合せ、こんがロ-プの輪を奴の頭に持っていって輪に入れようとするが、なかなか頭を上げないので、輪の中に入らない。僕が釣り竿の先で奴の頭をそっとたたいて、鎌首を上げさせようと言う事になり、竿の先で何回か叩くとぐっと鎌首を上げた。

 一瞬、飛び掛かってくるのではないかと、ビクッとしたが、

「それ行け、今だ、首を輪に入れろ」

「よし、今だ」 「・・・ 。。。。・・・」

マムシの鎌首が輪に入ったとたん、手前の細引きを引き締め上げる。--

「やったか?」--------

「やった、やった、とっ捕まえた」

 マムシも葉の下あたりに隠れていれば良かったのに、マムシにとっては不幸であった。捕らえたマムシを締め上げたまま、ビニ-ルの大きな袋に入れて、会社の食堂に持って帰った。

 早速、おっちゃんに電話し、どうしたら良いか尋ねる。

「マムシを一升ビンに入れて、水を少し、下から五センチ位いれ、ビンの口から棒切れを入れてマムシが逃げない様にして、二、三日そのままにして、何回か水を入れ換えて汚物を吐きださせ、がきれいになったところで水を捨てて、焼酎を入れれば、りっぱな、マムシ酒が出来るぜ、今そっちへ行くから、一升びんを探してマムシを入れておけ」マムシ酒の作り方の講釈が始まる。

 たまたま、食堂にはやっさん、てっちゃん、なしやん、他、何人か居り、近くで一升ビンを探して来て、これをきれいに洗い、こんとやっさんとで、頭からビンの中に入れようとするが、なかなか入らない。

 喰いつかれたらえらいことになるので、やっている本人も周りで見ている連中もビクビクしている。やっとの思いで半分位入ったところで、マムシが突然、飛び上がってビンから飛びだした。

 本人達も周りで見てた野次馬連中もわっと声を上げて飛び下がった。マムシがどこかに逃げてしまった。えらい事になってしまった。ここは大勢の人が集まる食堂だ。どこかに隠れて居なくなったらどうしよう。

 皆で必死になって探すがなかなか見つからない。そうこうしている内に、流しの下の隅に居るところを発見し、ひと安心、もう一度、細引きの仕掛けを出して、捕まえた。

 そうこうしている内、おっちゃんが顔をみせ、「こん、頭から入れる奴がいるか、途中から飛びだすに決まっているじゃね-か、尻尾の方から入れなきゃだめだ、俺の言う通りとやってみろ、さあ、尻尾から入れて、そうそうマムシの胴をいいこいいこする様にさすって、優しく撫でて」

 不思議や、不思議。マムシはするするとビンの中へ入って行く。流石、おっちゃん、こう言うことは良く知っている。頭が入ったところで、棒を差し込み、一安心。マムシはビンの中でおとなしくしている。さて、マムシはおとなしくビンの中に納まったものの、これをどうしようと言うことになった。

「これだけのマムシなら二万円か三万円で売れるべぇ」と言うことで、たまたま、やっさんの友達で「鰻屋、・・」と言う料理屋を経営しているご主人に電話で話したところ、買ってくれると言う。この人も相当に物好きな人である。

「やっさんの友達に余り高く売っても何だから」と皆でうじうじしていたところ、

「それじゃ、私が皆さんにうな重を奢りましょう」と言う「・・」の主人の言葉で商談が成立。会社の食堂でやじうましてた女の娘も含めて、十人余りで会社近くにある「・・」へ行き、腹一杯「うな重」を御馳走になった。

 マムシはウナギに化けて皆の腹の中に納まった。これも釣りのおかげと皆で大笑いしたが、マムシには可哀相なことをしてしまった。その後、マムシは、マムシ酒になって、成仏したであろうと念じるのみである。この次、マムシにあったら、そっとして置いてあげよう。

・・・・・・・・・

 渓流をやっている皆さんも、渓でマムシを始めとする蛇類に出会っていると思うが、僕は本当に蛇が苦手。山道を歩いていて、蛇に行く手を阻まれて釣りをやめて帰ったり、渓流脇の石垣で前後を大きなヤマカガシに囲まれて身動き出来なくなったのもしばしば。

 おっちゃんの様に蛇が出てくれば、とっつかまえて、蒲焼にして食ってしまう輩の前にはなかなか現れないのに、何でオレは良く出会うんだろう。

 誰か蛇避けのオマジナイか、蛇よけの匂い袋か、良い方法があったら教えて

                             〔山男魚〕




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